精度管理用試料

コントロール血清 / 尿生化学コントロール

臨床検査は疾患の診断や治療に不可欠です。島津ダイアグノスティクス株式会社は、検体検査の精度の確保を目的に、生化学検査用のコントロール血清を国内で初めて製品化しました。改良を重ねた製品は、今も多くの臨床検査室にご利用いただき、評価を頂戴しております。

1. 使用目的

精度管理の目的は日常検査の対象である検査データの信頼性を保証し、維持することにあります。コントロール血清などの精度管理用試料を臨床検体と同様に測定し、一定の範囲内の測定値であることを確認することによって、検査データの保証をします。

2. 精度管理用試料の選び方

下記フローチャートをご参照ください。

3. 製品紹介

コントロール血清

L-スイトロール®シリーズ

・ヒトプール血清をベースとした凍結品です。
・融解後すぐに使用できます。
ヒト由来酵素が添加されており、ヒト血清に近似した反応性を示します。
 濃度は精度管理に最適な常用参照標準物質:JSCC常用酵素(JCCLS CRM-001)と同程度になるように調整されています。
・成分の表示値は、認証標準物質を基にトレーサブルな値付けをしています。
 拡張不確かさと正確さの管理限界が分かり、リアルタイムで精密さのみならず、正確さの確認が可能です。

製品名・容量 特長
L-スイトロール®Plus
(1・2セット)


2濃度 各3 mL×20本
・直接 (抱合) ビリルビン、CK-MBおよび亜鉛を対象項目に加え、汎用性を向上させました。
・融解後、2~10℃保存にて3日間使用可能です。
・全ての項目において1は低濃度域、2は高濃度域になるよう調整されています。
・1と2のセット製品です。
ISO 17034認定取得 !!
L-スイトロール®Ⅰ
L-スイトロール®Ⅱ
L-スイトロール®Ⅱ EX


2濃度 各3 mL× 6本
2濃度 各3 mL×40本
・L-スイトロールⅠとⅡまたは、L-スイトロールⅠとⅡ EXを組み合わせての使用を推奨します。
・L-スイトロールⅡEXはヒト血清由来のコレステロール分画および卵黄由来のトリグリセライド分画が添加されています。
脂質項目の精度管理において、低濃度域と高濃度域の明確な濃度差が必要な場合は、L-スイトロールⅠとⅡ EXの組み合わせを推奨します。
・全ての項目においてⅠは低濃度域、ⅡまたはⅡ EXは高濃度域になるよう調整されています。

L-スイトロール®PlusがISO 17034認定を取得 !!

2024年1月17日、島津ダイアグノスティクス株式会社 結城工場は精度管理用凍結プール血清「 L-スイトロール® Plus」において、ISO 17034:2016の標準物質生産者認定を取得いたしました(認定番号 RMP00050)。
標準物質生産者の認定では、ISO 17034(標準物質生産者の能力に関する一般要求事項)を認定基準として採用することが国際試験所認定協力機構(ILAC)で決められております。また、標準物質の生産にかかわる試験・分析に関してはISO / IEC 17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般の要求事項)に適合することが求められます。標準物質生産者認定を取得したことにより、当該製品において標準物質生産者としての技術能力が国際的に認められるようになりました。

プレスリリース
ISO 17034:2016(JIS Q 17034:2018) 認定取得のお知らせ

L-コンセーラ®シリーズ

・ヒトプール血清をベースとした凍結品です。
・融解後すぐに使用できます。
・動物由来酵素が添加されています。
・精密さの確認が可能です。

製品名 特長
L-コンセーラ®D
(1・2セット)


2濃度 各3 mL× 5本
2濃度 各3 mL×20本
・従来の生化学項目に血中薬物25項目を加えたマルチコントロールです。
・TDM(薬物血中濃度モニタリング)管理指標に合わせた濃度設定のため、低濃度域と高濃度域の2濃度で精度管理が可能です。
・全ての項目において1は低濃度域、2は高濃度域になるよう調整されています。
・1と2のセット製品です。
 
L-コンセーラ®Ⅰ EX
L-コンセーラ®Ⅱ EX


2濃度 各5 mL×40本
2濃度 各10 mL×20本
・使用量にあわせて容量の選択が可能です。
・L-コンセーラⅠ EXとⅡ EXを組み合わせての使用を推奨します。
・全ての項目においてⅠ EXは低濃度域、Ⅱ EXは高濃度域になるよう調整されています。
・各30 mL×10本は受注生産品です。

尿生化学コントロール

ヒトプール尿をベースとした凍結品です。
・融解後すぐに使用できます。
・精密さの確認が可能です。

製品名特長
L-スイトロール®U
(1・2・3セット)


3濃度 各5 mL×4本
・添加物を減らし、臨床検体に近似した3濃度のセット製品です。
・全項目で2濃度以上が対象のため、精度管理に最適です。
・尿中の、NAG浸透圧IgGTfBMGも精度管理が可能です。
・融解後、2~10℃保存にて14日間使用可能です。
・容器が点眼瓶であり、滴下が容易です。

4. 精度管理用試料の歴史と開発者の声

ー コンセーラの開発コンセプト ー

現代と比べ検査の自動化が確立しておらずコントロール血清も普及していない時代は、検査室自らが自家製のプール血清を作製して内部精度管理に使用していました。
コンセーラは、発売後60年以上経っています。開発コンセプトは、『検査室で作製していた自家製プール血清の代替に利用できる。』でした。そのため、防腐剤や安定化剤は一切使用せず、性状を凍結乾燥することによってその性能を維持していました。

その後、凍結乾燥品に纏わる諸問題(溶解水の温度や融解後の安定性など)を解決するべく、また検査室に冷凍庫が普及したことや冷凍品輸送の物流が飛躍的に広がったことなどを鑑み、性状を凍結乾燥品から凍結液状品に変更し名称も『L-コンセーラ』に改めました。LはLiquidを示します。

ー スイトロールの開発コンセプト ー

1970年代以降、自動分析装置の普及によって、さまざまな測定法の試薬が開発されました。測定法によって異なる測定値が得られるため、コントロール血清に『測定機種別・測定法別の参考値』が求められるようになりました。そこで、製品ロットごとに外部精度管理調査を行い、その測定機種別・測定法別の集計結果を提供する『スイトロール』を上市しました。

その後、凍結乾燥品から液状凍結品に変更し『L-スイトロール』に改めました。 酵素測定のJSCC(日本臨床化学会)標準化対応法および認証標準物質(JCCLS CRM-001)の普及に伴って、遺伝子組み換え体などのヒト型酵素が入手可能になったことから、それまでの動物由来酵素をヒト型酵素に置き換えました。また、ヒト試料とL-スイトロールの反応性近似が得られたため、トレーサビリティー体系に基づいた表示値表(表示値の拡張不確かさと正確さの管理限界が分かる)に改修しました。

L-スイトロールを利用すれば、内部精度管理(精密さ)だけでなく、リアルタイムに正確さを確認できます。これが、L-スイトロールの最大の利点です。

さらに2024年1月にはISO 17034(標準物質生産者認定)を取得し、国際規格をも満たすようになりました。

ー 新製品の開発 ー

  • L-コンセーラ®D(血中薬物25項目を含む生化学検査用のコントロール血清)
  • L-スイトロール®U(尿生化学コントロール)

診療の迅速化に対応するために、自動分析装置の同時処理項目数が50項目以上になりました。また、汎用装置で測定可能な試薬キットが開発され、抗てんかん薬などの薬物濃度を院内検査する施設が増えました。そこで、同時測定される生化学検査と薬物検査をカバーする精度管理試料として、L-コンセーラ®Dを開発しました。


弊社は試薬キットを販売しておりません。サードパーティーの精度管理試料の新たな分野への第一歩として開発したのが、L-スイトロール®Uです。尿中のβ2-マイクログロブリン、N-アセチルグルコサミニダーゼ、トランスフェリン、IgGや浸透圧を、他の尿生化学項目と同時に管理できます。臨床検体に近似する組成としたのも新たな取り組みです。腎機能障害の程度を模したため、従来のLow/Highではありません。対象患者が異なる尿蛋白と尿微量アルブミンを2試料でカバーすることはできないため、3試料のセット組としました。

5. お客様の声

精度管理血清をご使用いただいているお客様の声を紹介いたします。

L-スイトロール®Plus

  • これまでは特殊項目のコントロール測定を別途行っていましたが、L-スイトロールPlusはCK-MBと亜鉛も対象項目であり、使用量や手間の削減につながりました。

L-スイトロール®Ⅰ、Ⅱ / Ⅱ EX

  • 測定対象項目数が多く、メーカーサーベイもしっかりしているため採用しました。

L-コンセーラ®D

  • エタノールが測定対象項目である事が大きく、大きなコスト削減につながりました。
    血中薬物濃度では今までは薬物単項目をそれぞれ3濃度の測定をしていましたが、 L-コンセーラDの2濃度にまとめることができ、利便性が向上しました。

L-コンセーラ®ⅠEX、ⅡEX

  • 生化学項目とCRPの内部精度管理にも適しており、コストメリットがあるため使用しています。
  • ISO対応として、他のサーベイでは実施していない項目もカバーできるため助かっています。 

L-スイトロール®U

  • コントロール尿の性能が良いことと、メーカーサーベイを利用したかったため、こちらを採用しました。
  • 今まで特殊項目を単項目のコントロールで別々に測定していましたが、この製品でまとめることができ、手間が省けて助かっています(尿中の、NAG、uALB、IgG、IgA、IgMをL-スイトロールUに切り替えました。)。 
  • 長年コントロールを発売しているメーカーの商品でしたので安心感をもって切り替えられました。

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